
「おもてなし」を、もっと身近に、もっとスマートに。
執筆者:アンドリュー・リウ 最高財務責任者(CFO)兼共同創業者
AIエージェントがもたらす、顧客体験の新定義
素晴らしいおもてなしを提供したい。これはすべてのレストランブランドが抱く願いです。どこにでもあるようなサービスや、単なる事務的な対応を望む人などいません。お客様のことをしっかりと覚え、クレームになる前に対処し、各店舗の傾向を把握して、すべてのご来店を「また行きたい」理由に変える――そんな感動的なおもてなしこそが理想です。
言い換えれば、それは「採算を超えた、究極のおもてなし」です。
しかし、多くのレストランブランドにとって、その願いを実現できなかった理由は「熱意」の不足ではありません。「コストと効率」の壁でした。
創業者のストーリーや研修マニュアル、リーダーシップの講演の中では、そうしたおもてなしは素晴らしく響きます。しかし、何百、何千という店舗を抱え、数百万ものお客様が訪れ、多数のデジタルチャネルに対応せねばならず、ただでさえ薄利なビジネスにおいて、そのおもてなしを徹底することは現実的には不可能(unreasonable)でした。
目指す基準は間違っていませんでした。ただ、それを実行するビジネスモデルが追いついていなかったのです。
そして今、AIエージェントがそれを根本から変えようとしています。
ついに、現実的なコストと規模で、24時間365日、お客様一人ひとりに寄り添った対応ができる時代が到来しました。すでに手一杯の現場スタッフにさらなる負担を強いることはありません。あらゆるお客様との接点において、対話、対応、リカバリー、担当者への引き継ぎ、分析、そして改善までを担う「AI搭載のサービスレイヤー」をすべてのブランドが導入できるようになります。
心温まるおもてなし自体のハードルが、高すぎたわけではありません。
難しかったのは、それを「すべてのお客様と店舗」で一貫して提供し続けることだったのです。
ビジネスモデルとして成り立ちませんでした
顧客体験の向上がビジネスの成長に直結することは、飲食業界において常に共通の認識でした。これまで課題となっていたのは、おもてなしへの熱意ではなく、その提供にかかる人的・金銭的なコストです。
きめ細やかなおもてなしを人力で提供しようとすると、すべてのチャネルを監視し、問い合わせや苦情への対応、返金処理、重要案件のトリアージ、不満を持たれたお客様へのフォローアップなどを行うスタッフが不可欠になります。これは、500ドルの航空券や1,000ドルのホテル宿泊といった高単価な業界であれば理にかなうモデルです。しかし、12ドルの食事や15ドルのデリバリー注文といった低単価なサービスにおいては、到底採算が合いません。
その結果、飲食店のクチコミやフィードバック全体の54%が、返信すらされずに放置されているのが現状です。これは企業がお客様を軽視しているからではなく、従来のビジネスモデル自体が、こうした膨大な件数に対応できるよう設計されていないことが原因なのです。
頻度に関する問題が発生したため、対応が不可能な状態となっておりました。
複数の店舗を展開するブランドでは、Google、Yelp、TripAdvisor、DoorDash、Uber Eats、Instagram、公式アプリ、さらには店頭での会話まで、日々膨大な数のお客様とのタッチポイントが存在し、常にさまざまなご意見(シグナル)が寄せられています。
しかし、これまで企業がそのすべてに対応することは不可能に近い状態でした。特に飲食業界(QSR)におけるスタッフの離職率は年間130%を超えており(Black Box Intelligence、2024年調査)、問い合わせ対応を担う担当者が辞めるたびに運用の引き継ぎが発生し、プロセスが滞ってしまっていたからです。その結果、多くの企業は「目立つレビュー」への個別対応を優先せざるを得ず、現場のマネージャーに「手が空いた時にフィードバックを確認する」よう指示するにとどまっていました。
この対応の遅れは、ビジネスの売上損失に直結します。問い合わせから1時間以内に返答を返した企業の顧客維持能力は71%に達するのに対し、対応に24時間かかった企業では48%にまで低下してしまいます(Ringly.io、2025年調査)。この「23%もの維持率の差」がすべての店舗で毎週のように積み重なることで、ブランド全体の収益に甚大な影響を及ぼしています。
AIエージェントの導入によって業務はどう変わるのか
AIエージェントの導入により、顧客体験(ゲストエクスペリエンス)にかかるコスト構造は劇的に変化します。AIがお客様の課題を理解し、ブランドのトーン&マナーに沿って回答するだけでなく、補償プロセスの適用やデリケートな案件の担当者へのエスカレーション、度重なる問題の特定、さらにはその後のフォローアップまで対応します。これらすべてのアクションを、すべての店舗やチャネルにおいて、24時間365日いつでも実行可能です。
これにより、おもてなしの主役である「人の温かみ」が失われるわけではありません。むしろスタッフは、人でなければ対応できないサービスの提供に集中できるようになります。一貫した上質なサービスの提供を阻んでいたこれまでの業務上の制約を、AIが取り除いてくれます。
その差はデータにも明確に現れています。いまだに手作業での顧客対応を続けているブランドでは、店舗あたり年間平均125,000〜175,000ドル相当の機会損失が発生しています(2025年 Momos ROIモデル調べ)。一方で、AI主導の顧客対応にシフトしたブランドは、初年度から128%のROI(投資対効果)を達成しています。
お客様体験の向上を導く、新たなオペレーティングモデル
かつてのモデルでは、クチコミの管理、チケットの処理、アンケートの分析、返金の対応、現場チームによるオペレーション課題の対応などがそれぞれ別の部署で行われ、お客様の体験は分断された機能として扱われていました。
AIエージェントの導入により、企業はこうした複数のワークフローを1つのスマートなサービスレイヤーへと統合できるようになります。
例えば、デリバリー注文で商品の入れ忘れが発生したというお客様からのクレームに対し、AIエージェントが問題を正しく把握した上で、適切な補償ルールを適用してお客様への返答を行い、裏ではオペレーションの改善データとして記録します。また、特定の店舗で提供の遅れに対する不満が相次いでいる場合は、実害(ブランドイメージの低下)が生じる前にAIがその傾向を検知します。さらに、アレルギー物質やロイヤリティポイント、過去の利用体験に関するお問い合わせにも、担当部署の割り振りを待たせることなく、AIがその場ですぐに解決します。
これは単なるカスタマーサポートではありません。実店舗をはじめとするリアルな経済活動を支える、全く新しいサービスインフラです。
はじめに
米国の飲食業界における年間売上高は1.1兆ドルに達しています(全米レストラン協会、2025年)。顧客体験(CX)への投資をどれほど控えめに見積もったとしても、AIを活用した顧客体験市場の規模は、数百億ドル規模に上ります。
しかし、真のビジネスチャンスは、既存のソフトウェアコストを削減することだけにとどまりません。AIエージェントはサービスモデルそのものを根本から変革しようとしています。店舗マネージャー、カスタマーサービスチーム、フランチャイズ本部、そしてバックオフィススタッフがこれまで手作業で行っていた業務の大部分を、24時間365日稼働するインテリジェントなシステムへと移行させているのです。
Momosは、多店舗展開する飲食ブランド向けに、まさにこの基盤となる仕組みを構築しています。AIエージェントが、あらゆる店舗、あらゆるチャネル、あらゆる市場を網羅し、お客様への返信、よくあるトラブルの解決、ブランドの規定に沿った補償対応、重要案件の適切なエスカレーション、各種オペレーション課題の担当チームへの振り分けまですべて対応します。
私たちの目的は、現場のスタッフに新たな管理ツールを増やすことではありません。これまで多くの人員と手間の調整を要していた、煩雑で膨大なルーティンワークを、自律的に常時稼働するサービス基盤へと移管することです。これにより、現場のスタッフは本当に人でなければできない業務に集中できるようになります。
かつて、極限まで行き届いた「おもてなし」には、それに見合う莫大なコストが不可欠でした。
今、その常識が大きく変わろうとしています。
参照元
Black Box Intelligence. Workforce Report, 2024年版.
Ringly.io. Restaurant Guest Recovery Benchmarks, 2025年版.
National Restaurant Association (NRA). State of the Restaurant Industry, 2025年版.
Momos ROI Model. 社内分析データ, 2025年.

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